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なぜRC住宅に防護壁は不要なのか?

防護壁とは、崖下に建築物を建てる際に併設する構造物を言う。

豪雨や地震などの自然災害が懸念される昨今、安心して暮らしていくためには防護壁があるに越したことはない。しかしそれ以前に、崖下などの該当する場所へ住宅を建てる際には、法律により防護壁の併設が義務付けられていることも理解しておこう。

まずは「崖」の正しい定義を確認する。

崖とは?

誰しも「崖」というものをイメージすることは可能だが、イメージするのではなく定義を語ることはできるだろうか?

実は「崖」は、自治体の「がけ条例」で明確に定義されている(条例の名称は自治体により様々)。その根拠法規は建築基準法第19条4項や都市計画法施行規則第16条4項である。

法令では、以下の2点を同時に満たした場所を「崖」と定義している。

勾配が30度を超える傾斜地

崖であることの第一の要件は、勾配が30度を超える傾斜地であること。傾斜が30度を超える場所では、地震や豪雨などで崩れる恐れがあるとの理由で、これを崖の要件の一つとしている。

傾斜地の高さが2~3m超

第二の要件は、傾斜地の高さが2~3m超であること。高さとは、傾斜地の上端から下端までの垂直距離を言う。

高さに「2~3m超」と幅がある理由は、自治体ごとの基準が異なるためである。たとえば神奈川県鎌倉市では2m超と規定しているが、同県横浜市では3m超と規定している。鎌倉市のほうが崖崩れのリスクが高いため、高さの定義を厳しく設定していることが分かる。

防護壁はがけ崩れなどから建物を守るもの

「崖」の定義に該当する場所へ住宅を建てる場合、崖からの距離等の条件を満たしていない限り、法令に則って(のっとって)防護壁を設置しなければならない(宅地造成及び特定盛土等規制法)。また、宅地造成工事規制区域に該当する地域に建築物を建てる場合には、そもそも自治体の許可を得なければ工事自体ができない。

規制が厳しいと思われる方がいるかもしれないが、これは建物と我が身を守るための重要な決まりである。

防護壁を設置する目的は、崖崩れなどから建物を守ることである。ひいては、建物の中にいる人間の命を守ることである。崩落してきた土砂や落石を受け止めることで、防護壁が建物も命も守る。自然災害が増加している昨今であればこそ、リアルな実感をもってその重要性を理解できよう。

建物を建てる目的で土地を購入する際には、がけ条例等による防護壁の必要性について、あらかじめ自治体や不動産会社等に確認することが望ましい。

鉄筋コンクリート(RC)住宅には防護壁が不要な理由は?

防護壁に関する厳しい規制について説明したが、実は防護壁を併設しなくても合法的に住宅を建てられる方法がある。鉄筋コンクリート(RC)住宅を選択することである。

鉄筋コンクリート(RC)住宅は、法的な防護壁設置の対象外となる。対象外となる理由、および崖地における鉄筋コンクリート(RC)住宅を建てるメリットを見てみよう。

【防護壁の対象外となる理由】建物自体が防護壁を兼ねる構造体のため

鉄筋コンクリート(RC)住宅は、土台と建物部分が一体化した構造である。そのため、仮に崖崩れが発生したとしても、流れ来る土砂は建物自体により食い止められる。言い換えれば、建物自体が防護壁の役割を果たすということである。

そのため、法令では鉄筋コンクリート(RC)住宅に関し、崖下であっても防護壁を併設しなくて良いと定められている。

【崖地にRC住宅を建てるメリット】土地を有効活用できる

崖地に一般住宅(木造住宅など)を建てる場合、防護壁を設置しなければならない。防護壁設置のコストを避けるためには、崖から一定の距離がある場所に住宅を建てる必要がある。

一方、鉄筋コンクリート(RC)住宅の場合は防護壁不要のため、崖から距離を置く必要がない。その分だけ土地を有効活用できる点が、鉄筋コンクリート(RC)住宅のメリットとなる。

あわせて、そもそも防護壁を設置する必要がないのだから、防護壁の工事費がかからない。工事車両の出入口を整備したり通行制限を行って警備員を配置したりする費用もかからないため、トータルで数百万円の節約になるだろう。コストを節約できる点も、崖下に鉄筋コンクリート(RC)住宅を建てるメリットである。

まとめ

崖地に住宅を建てる際のルール、および鉄筋コンクリート(RC)住宅の優位性等について解説した。

ここで一点ご注意がある。鉄筋コンクリート(RC)住宅とは言え、完全に無条件で崖下に住宅を建てられるわけではない、という点だ。

たとえば、傾斜30度の範囲内に開口部(出入口や窓のこと)を設けない、という条件が課されることがあるが、この条件の場合、出入口は崖面と相対しない方向へ設置しなければならない。また、窓も崖とは別方向のみに設置するか、または傾斜30度の範囲より上部に設ける必要がある。

もちろん、仮に条件が課されたとしても、鉄筋コンクリート(RC)住宅なら防護壁を設ける必要はない。この点は鉄筋コンクリート(RC)住宅の大きなメリットだ。